アイリは照れながら伏し目で、
「友達にダイエットのこと相談したら、泳いだ方が痩せるって言われて……。
今日からしばらくは、プール中心」
「そっか」
“体型のこと色々言ってくるマサヤとは別れたんだから、もう、ジムに通う目的もないんだけど……”
痩せたい。
ジムに通い続けたい。
アイリには、そう思う別の理由が出来てしまった。
「そういえば、今日はミズキちゃんと一緒じゃないの?」
アイリは肩まで水に浸かった体勢のまま、プール脇に座ったままのナナセの顔を覗き込む。
彼の端正な顔に彩られるまつ毛が切なげに揺れていて、アイリの胸は甘く苦くしめつけられた。
ナナセとミズキの間に起きたことは知らない。
しかしアイリは、ナナセがミズキのことで悩んでいるということだけは、何となく察した。
「……あれから、ミズキちゃんとは会えたの?」
マサヤの家に行った日のことを、おずおずと尋ねる。
ナナセはその質問には答えず、「ははっ……」と、何かをごまかすように小さく笑うだけだった。
「俺みたいなやつに彼女が出来たこと自体、奇跡だったのかも」
独り言のように、小さくつぶやく。
その声音は驚くほど静かで、どんな感情が込められているのか分からなかったが、それを聞いたアイリの胸はチクッと痛んだ。


