しゃぼん玉



ナナセは今、自分の部屋にいた。

アイリと別れ、帰宅してからずっと、勉強すら手につかず、ソファーに座ってうつむいていた。

ミズキからかかってきた電話を終えて、部屋の角にあるベッドにうつぶせに寝転ぶ。

20帖以上あるこの室内の空気に圧迫されるようだった。


学習机とソファー、テレビ、テーブル、本棚と、必要最低限の物しか置かれていない殺風景なナナセの部屋に、ミズキにもらった物がひとつだけあった。

今年の2月に受け取ったバレンタインの贈り物が入っていた、ブルーとブラックで彩られた紙袋。

中身はもう食べてしまったけれど、紙袋だけは捨てずにこうしてとっておいた。


長年、自分には無縁だと思っていたバレンタイン。

“ミズキちゃん、甘い物が苦手な俺のために、ビターチョコのケーキ作ってくれたんだよね……。

おいしかったな”

紙袋はたたんで机の引き出しの中に入れてある。

ナナセはベッドから起き上がって、それを取り出した。

“いつも、ミズキちゃんは俺のこと考えてくれてた……。

一緒に食べる料理もそうだし、普段だって……”

なのに、どうして距離を置きたいなんて言ってしまったのだろう……。