しゃぼん玉


けれど、ミズキが知らないうちに、ミズキとナナセの間には微妙な距離ができていた。

ミズキが電話をするとナナセはすぐに出てくれたのだが、彼の声のトーンは、さきほどまでと明らかに違い、憂(うれ)いがあった。

「心配かけてごめんね……」

『ううん……。

もう、家?』

「うん……」

『よかった、無事に帰れたんだね』

シーンとする。

いつもならもっと会話が弾むのに……。

「明日、また会えるかな?」

ミズキは恐る恐る、電話の向こうのナナセに話しかける。

ナナセには直接会って、今日のことを全て話したいと思った。


いつものように、誘えば会える。

……ミズキのその予想は裏切られた。

『……ごめん……。

しばらく、会うのやめよう』

「え……?」

ミズキの全身から血の気が失せそうになった。

ナナセを失うかもしれないという恐怖が、全身の血を逆流させる。

『今までごめんね。

俺、ちっともミズキちゃんの役に立てなかった。

全部、空回りしてた。

……俺には、ミズキちゃんみたいな彼女、もったいない』

「そんなことっ……」

『……ごめんね。

いま、気持ちがグチャグチャで、よく分からない……。


しばらく一人で考えたいんだ』


電話を切った後、ミズキは罰(ばち)が当たったのだと思った。

一時的とはいえ、元カレに甘えてしまったから……。