ミズキは、ヒデトの言葉を聞いてマナのことを思い出していた。
ユウは高校一年の頃からマナに片思いをしていたが、三年の時、マナはシュンと知り合い、ユウに振り向くことはなく、シュンと付き合った。
「……水谷君、もしかして今もマナのことを……?」
「……ああ」
ヒデトはユウを心底心配していた。
「ユウとは時々、高校の時のヤツらも呼んで遊んだりしてんだけど、酒飲んだ時の帰り道とか、ユウ、ひどくてさ……。
本人は酔ってて覚えてないかもしんないけど、『高山さん、シュン君と幸せにやってるかな?』とか、『高校の時に戻りたい』とか、『高山さんに会いたい』って、泣きながら言うんだよ……。
酔いが抜けた翌日とかは、今みたいにケロッとしてんだけどさ。
高山さんのこと、まだ忘れられなくてツラいんだろうから、ちょっとでも他の女子と仲良くなれば、ユウも多少、今よりは前向きになるんじゃないかって……」
「そうだったんだ……。
そうだよね……。
水谷君、ずっとマナのこと好きだったもんね……」
「ユウが素面(しらふ)の時に高山さんのこと訊いてみると『もういい思い出!』とか言ってるけど、酔ってる時は本音が出るって言うしな……」
「水谷君なりに、マナのこと忘れる努力してるんだね」
「多分な……」
「難しいね……」
数秒の沈黙。
ヒデトは、壁にもたれて立っているミズキの横顔を見た。
「だな……。人の気持ちって難しすぎる。
特に恋愛はさ……。
一度本気で好きになった女のこと、忘れられる方法なんて分かんないよな。
あるなら俺も知りたい……」


