視線の先の信じたくない光景を見て、ナナセはそこに全神経が向かってしまった。
「ナナセ君……」
アイリもナナセの心情を察し、ただならぬ気持ちでミズキの後ろ姿を見送る。
立ちつくしたままのアイリとナナセの両脇を、駅を利用する人々が通り過ぎていく。
それらの足音や話し声も遠くに聞こえ、ナナセの頭は何かで打ち付けられたような強い痛みを感じた。
“ミズキちゃん……。
電話に出てくれなかったのは、他の人と会いたかったから?
その人達の方が、俺よりミズキちゃんの支えだったりする?
俺では、ミズキちゃんのそばにいる資格はないかな?”
ナナセはこの時、ジム通いを優先してミズキとまともに連絡を取り合えなかった頃のことを、改めて強く反省した。
“話したい時に電話に出てもらえなくて不安になる気持ちとか、全然分かってなかった。
俺はあの時、毎日ミズキちゃんにこんな思いをさせてたんだね……”
それが、悔しくて悔しくて……。
“こんな俺じゃ、ミズキちゃんに愛想尽かされても仕方ないよ……”
ナナセは、今の状況を静かに受け入れたのだった。


