マサヤはアイリとの別れに納得はしていなかったが、
「ナナセが相手なら、俺、負けたわ」
と、別れを受け入れた。
不気味なほど静かなマサヤを残して宇野宅を出ると、アイリはとりあえず自宅に帰るべく、駅へ向かった。
アイリはナナセの連絡先を知らないので、ナナセへの恋を自覚したからといって今すぐ何かをするわけにはいかない。
ミズキの連絡先なら知っていたけれど、電話をかけたりメールを送る気にはなれなかった。
“ミズキちゃんは、ナナセ君のこと、ちゃんと好き?”
駅に向かう途中、アイリはここ最近の自分の気持ちを振り返ってみた。
マサヤと付き合っていた時。
いま思えば、あの頃から違和感があった。
ナナセが初めてジムにミズキを連れてきた日……。
その前から、親身になって話を聞いてくれるナナセに対し、アイリはそれ以上の関係を期待していた。
だが、ナナセがミズキをジムに連れて来た日、無意識のうちに抱いていた淡い期待は裏切られ、ナナセとミズキの姿を目にし、胸が痛んだ。


