「加害者も、被害者……」
マナは複雑な気持ちを隠せず、そうつぶやいたきり口をつぐんだ。
今まで、そんな風に考えたこともなかった……。
アケミは優しくマナの肩に片手を置き、
「警察に行ったら、犯罪者が更正する可能性はあるよ。
実際リュウも、少年院を出てから真面目に働いてるみたいだし」
それを聞いてマナは、うつむかせていた顔をそっとあげる。
「Mを警察に突き出すのもアリだよ。
ただ、それを決めるのはマナちゃんや周りの人じゃなく、被害者Hなの。
Hは、別のやり方で犯人Mに改心してもらいたいのかもしれない。
Mを警察に捕まえてもらってMの親が悲しむことについては…冷たい言い方かもしれないけど、仕方ないんだよ。
そこまでMを放置していた親にも、全く責任がないわけじゃないんだから。
Hがそれを気にすることはないはずだよ。
それに、Mを問い詰めて法的な手段でMに罰を与えることができても、Hの気持ちが完全に晴れることはないから……」
アケミは、リュウに暴行を受け後遺症を残した被害者の無念を知っていた。
マナはアケミの話を聞いて、自分の意見もミズキの考え方も間違っていなかったと知る。
と同時に、警察に行って全てが丸く納まるわけではないということも思い出していた。
マナも、この一年以内にそんな悔しい思いを嫌というほど思い知らされたことがあったから……。


