「ナナセ君……」
部屋にマサヤを残し、アイリはリビングの出入口で廊下のナナセを呼びとめていた。
その声音の甘さに、シュンとマサヤの目はアイリに集中する。
マナとナナセは、ゆっくり振り向いた。
アイリは頬を赤くしながらも悲しそうにうつむいて、
「マサヤのこと理解しようとしてくれてありがとう……。
私、本当はもっと早くここに着いてて、さっきナナセ君がマサヤに話してること聞いてたんだ。
なんか、感動した……」
「そんな……。俺は何もしてないよ、でしゃばっちゃっただけ……。
アイリちゃんは、大丈夫?」
ナナセは、アイリがマサヤの携帯電話を勝手に持ち出したことでマサヤに何かされないか心配になりそう訊いたのだが、マサヤはさきほどミズキに接していた時と全く違う穏やかな声で、
「ナナセ、だっけ?
人聞き悪いこと言うなよ。
俺、今すげー気分いいから」
と、廊下に顔を出した。
「そう……。
じゃあ、またね」
ナナセは穏やかに目を細めた。
アイリがマサヤと仲良くなってくれそうなのは嬉しいが、ミズキのことを考えると複雑で……。
そんな気持ちのまま、シュンやマナと共にナナセは宇野宅を後にした。


