しゃぼん玉


「穂積さんは幸い、メグルちゃんの家でお世話になっています。

でも、そんな風に周りの人から優しくされていても、穂積さんが虐待で受けた傷は、すぐには治りません……。

治ったように見えても、また傷口が開いて、思いつめ、死を選ぶ、ということも十分ありえるんです」

ミズキはそこで、一旦言葉を区切る。

涙が出そうになったが、ここで泣いては示しがつかないと感じ、深呼吸をしてそれを抑えた。


正美とナナセは、ミズキの凛々(りり)しい姿に目を奪われていた。


「リク君は、穂積さんのことを、本物の身内のように大切に思っています。

そんなリク君から、穂積さんの存在を消すようなことにだけは、なってほしくないんです……。


私のような思いをする人が、少しでも減れば……。

そう思うんです。


言葉で説明するのは難しいですが、大切な人が亡くなるのは、本当に耐え難いことなんです……。

私は今でも、リョウの死を信じられない部分があって、そのうち何事もなかったかのように帰ってきてくれるんじゃ、って、思ってしまうこともあるんです……」

葬儀の日、リョウはたしかに青空の中に溶けていったのに……。

「人が亡くなる辛さに比べたら、穂積さんの傷に向き合うことの方が、はるかに希望を感じられる……!

だから、穂積さんに関わることを負担だなんて思いません。


私は、リク君と穂積さんの笑顔が見たいんです。

たとえ、時間がかかっても……」