ミズキを心配そうに見守る正美とは逆に、ナナセは迷いのない瞳でミズキを見つめている。
ミズキも決意を示すかのように、まっすぐ正美を見据えた。
「目の前に助けられるかもしれない命があるのに、見て見ぬフリはできません。
私は、悩んでいる人を救う職に就きたくて、心理学を専攻してるんです。
……前までは、パティシエになることを夢見ていました。
でも今は、何を後回しにしても、人を助ける職業につきたいと思っています」
「どうして、そこまで……?
女の子なんだし、あなたにはパティシエの方が似合っているのに……。
精神科でのお仕事は、思っているよりも大変なものみたいだし……」
胸に両手を当て、ミズキの顔を覗き込む正美。
ミズキは、弟を自殺で亡くしたと話した。
「人は、いつ死を選ぶかわかりません。
リョウがいなくなった時、私は現実から目を背けたくなりました。
それまで平穏に過ごしてきた自分に、苛立ちを感じました。
そんな日々を過ぎて、わかったことがあります……。
昨日まで元気に笑っていた人が、今日突然いなくなるということもありえる、ということです。
人はいつ、どんなタイミングで追い詰められるのか……。
心理学を学んでいても、それだけはわからないんです。
穂積さんの場合も、そうです……」


