リクの自宅に訪問したミズキは、リクの母·正美に呼び止められていた。
昨日、リクがずぶ濡れで帰宅した理由や経緯を、正美に話したミズキ。
ナナセも途中、リクの部屋に続く階段で立ち止まり二人の話を聞いていたが、気がつくとミズキの元へ戻っていた。
正美は、息子の見舞いに来てくれた者のうち、もっとも優しそうな顔立ちをしたミズキを選んで引き止め、こう尋ねた。
「もしかしてあなたが、リクが話してた学生さんかしら。
心理学の勉強をしているっていう……」
「はい……」
「それで、リクと力を合わせて、メイちゃんを助けようとしているの?」
「そうです」
正美がなぜこのような質問をしてくるのか、ミズキにはわからなかったけれど。
「私は穂積さんのことを助けたいと思って動いてました。
それで、リク君と知り合うことができたんです」
正美は軽く背中をのけぞらせ、
「どうして、他人のあなたがそこまでするの?
普通、そういうややこしい問題には関わりたくないと思うでしょう?
重ねて失礼なことを言ってしまうけど、あなた達はまだ若いし、自分のことだけで精一杯なんじゃないの?」
そう問いかける正美の口調は、あくまで穏やかだった。


