しゃぼん玉


数分後、メイの悲鳴がなかったかのように、穂積家はシーンと静まり返る。

それでもかまわず、リクは玄関の扉を叩き続けた。

“また、おばさんに何かされたの!?”


そうして待つこと10分……。

扉を叩き続けた拳がじわじわ痛み始めた頃、ようやくメイの母親·翔子が、ドカドカと乱暴な足取りで玄関の扉を開けた。

彼女はリクの顔を見て、不気味なほどの愛想笑いを顔に貼り付けた。

「リク君、せっかく来てくれたのに待たせてごめんね。


あの子、ヤケドしちゃってぇ……。

今、手当てしてあげてたの。


私これから仕事に行くから、あの子のことお願いできる?」

「はい……」


翔子が何かしらの手段を使ってメイを虐待したのは明白だったが、

リクは翔子を問い詰めるより、メイの様子を確認することを選んだ。

メイは無事だろうか……?


ただならない気分で翔子の後ろ姿を見送った後、リクは急いで穂積家に上がり込んだ。


台所のガスコンロのそばで、座り込んでいるメイ。

彼女は自分の足をかばうような姿勢で、ぐったりしている……。