どんなに理解のある心優しい人間にも、我慢の限界がある。
虐待を受けず、親に愛されて育った人は、他者に優しくするのは当然と認識しているため、
虐待されて育った人の、子供への冷たい態度や行動、他人に無関心な考え方を理解できない。
そういう話を正美に聞いたリクの瞳には、ただただ、影が落ちていく。
「リクがメイちゃんのことを大切に想っているのは、昔からわかってた……。
だから、こんな風に邪魔するようなことはしたくなかった。
でもね……。
もしリクの願いが通じて、いつかリクとメイちゃんが付き合えることになったのだとしても、リクはメイちゃんに愛情を注いでもらえないかもしれない……。
結婚をすることになったとしても、幸せになれるとは限らない。
リクがつらい思いをするだけなのよ?
だから、お母さんとお父さんは、リクがメイちゃんと関わるのに反対なの。
幼なじみとして関わるだけならまだよかった。
でも、メイちゃんと恋愛や結婚をするとなれば、お母さん達は黙って見ていられない……。
リクには、必ず幸せになってほしいのよ……」


