しゃぼん玉


熱のせいか、感情の高ぶりからきているのか。

リクの瞳は潤んでいる。

正美は眉を下げ、リクを見つめた。

「リクに黙ってメイちゃんにお金を渡しに行ったことは、謝るわ。

でもね、それは、将来的にリクのためになることなの。


……リクにはまだ分からないかもしれないけど……。

虐待を受けた子の精神は、他の子とは違うの。


お母さんね、実は今までに、虐待に関する本をたくさん読んだの……」

正美が買った本は義弘の書斎に置いてあるのだが、リクはあまり本に興味がないため、書斎にもほとんど入らないし、そういった本がこの家にあるということを知らなかった。

ベッドに横たわったまま、リクは少しだけ首を動かし母親の顔を見る。


正美は、そういった書籍で得た知識をリクに話した。

虐待を受けた子供の育ち方には様々なケースがあるのだが、多くの子供に共通して言えるのは、幼い頃から愛情を受けずに育ったため、他者に愛情を示せない子供に育ってしまう……。