しゃぼん玉



リクは、一日中ベッドの中にいた。

消化に良い食事すらノドを通らなかったので、栄養補給用の飲むゼリーと薬だけを口にしている状態。

薬が効いているおかげで眠気がひどく、息すらしていないように、ずっと静かに眠り続けていた。


熱が下がらないためか、体中の筋肉が痛む。


今夜、父·義弘が帰ってきたら、車で病院に連れて行ってもらうことになっている。

基本リクは健康体で、寝込むことが滅多になかったため、母·正美は、ひどく彼を心配をしていた。

30分ごとにリクの部屋にやって来ては、うっすら汗をかいている息子の額をタオルで拭いたり、氷枕を取り替えたり、加湿器の水タンクに水を補充していた。

そうして何かをしていないと、正美は落ち着けなかった。

“なんで、あんなにずぶ濡れで帰ってきたの?

やっぱりメイちゃんのせいなの?

あの子には、お金も渡したのに……。

なぜ、こうやってリクを苦しめるの?”

「リク……」

眠っているはずの息子が、かすれた声で、

「母さん……」

「リク……!!

起きたの!?」

窓際に背をあずけていた正美はリクのそばに駆け寄る。

彼の細い声を聞き取ろうと、ベッドに寝ている息子の枕元に耳を近付けた。