ミズキは調理を始める。
もう、ナナセの好みと苦手な物は全部頭に入っている。
ナナセも、ミズキの横でそれを手伝った。
二人の間には、週に一回はこういう時間がある。
ナナセは、家庭的なミズキの雰囲気に、
ミズキの優しい笑顔に、
心底惚れていた。
ミズキの料理する姿は一生懸命なのに、どこか優雅で、繊細で……。
そんな姿を見るのが、調理を手伝う時のナナセの楽しみのひとつでもある。
「ナナセ君、味、見て?」
柔らかい微笑をたたえながら、味見皿を渡してくるミズキ。
ナナセは、こんなシチュエーションをいまだに照れくさく感じるが、決して嫌ではない。
“綺麗だな……”
ミズキが与えてくれるこの雰囲気に、ナナセは好きの想いを強くしていった。


