二人のいる空間だけ、この世界と切り離されているような感じだった。


リクは、メイにナイフの切っ先を向ける。

その手はひどく震えていた。

悲しみのせい?

それとも、やる瀬ない想いのせい?


“メイ……。

次に生まれ変わる時は、あたたかい両親の元に生まれてこれるといいね。

メイがずっと望んでいた、優しくてあたたかいお母さんの元にさ”


「メイ……。

メイは一人じゃない。

メイを刺して、俺も、後を追うから」

メイは柔らかい表情でゆっくりうなずく。

“リク、ありがとう。

これで私、やっとリョウの元へ行ける……”


リクがメイの心臓を狙い、ナイフを突き刺そうとしたその時。

「リク君、やめてー!!」

遠くから二人の会話を見ていたメグルが、両者の間に割り込んだ。

メグルは持っていた傘を宙に投げ捨て、飛びつくようにメイを抱きしめる。

リクは催眠から解き放たれたように、ナイフを手から滑り落とした。

「メグルちゃん……」