“俺は、メイに生きていてほしい……。

死んでほしくない”

そう思いながらも、リクの頭の中には、今まで見てきたメイの痛々しい姿が流れ込んでくる。

母親に甘えることができなかった毎日。

唯一メイを可愛がっていた父親とは、もう会えなくなり……。


リクの心には、メイを楽にしてあげたい、助けたい、という思いと、

宇都宮と翔子に対する怒り、

それらが交互にぶつかってきた。


リクも、本当はわかっている。

どれだけ努力しようとも、メイの家庭環境は変えられないということ。

長年娘を愛さなかった女性が、昨日の今日でいきなり母性に目覚めるなんて変化は、起こりえない。


メイはナイフを拾い上げると、それを再びリクににぎらせた。

「リク、お願いだよ」


“メイの命を刈り取ることで、メイを全ての苦しみから解放する。

それこそが、メイにとって一番の幸せなの……?”