これは大学の友達の意見を取り入れた作戦である。
いくら携帯依存症みたいなマサヤでも、一人でいる時くらいはケータイを手放すだろう、と、アイリの友達は言った。
アイリはいつも通りマサヤに夕食を作り、その後すぐに帰宅するフリをする。
そして、マサヤが入浴、あるいは就寝する時間を狙ってマサヤのケータイを見ると決めてやってきた。
さすがのマサヤも、睡眠時間にまでケータイを触ることはないだろう。
マサヤは、夕食を食べた後そのまま眠りにつくことがある。
だが彼は、アイリがそばにいると、なぜか眠らない。
なので、アイリは帰宅するフリをしてマサヤに隙(すき)を作ることにした。
その作戦はアッサリ成功した。
夕食を作った後、アイリは帰宅すると見せかけ、マサヤの自宅前で身をひそめた。
するとマサヤは案の定、自室で眠ってしまった。
気配でそれを感じ取ると、アイリは合鍵を使い屋内に侵入。
さきほど作った料理の香りが残る静かな通路を、足音を立てないように気をつけ進んだ。


