しゃぼん玉


メイは、正美に注文してもらったカフェオレに口をつけることなく、喫茶店を後にした。

今頃はもう、メグルが自宅で待っているはずだが、メイはまっすぐ滝川家に戻る気にはなれなかった。

今、一番会いたい人物の姿を探し、にぎやかな繁華街をさまよう。


弁護士の宇都宮。

彼に会いたい……。

今、唯一メイの気持ちを考え、彼女の気持ちを理解してくれる大人は、彼だけだから。


ケータイを持っていないメイは、好きな時に宇都宮を呼び出すことができない。

ケータイが普及してから、公衆電話の数は激減している。

仕方ない。メイは、宇都宮とよく行ったファミレスを目指した。

そこに行けば、宇都宮に会える気がする。


最悪、母親の虐待がおさまらなくても、宇都宮がいてくれたらそれでいいと、メイは考えていた。

“でも、あの人は弁護士だし、仕事が終わったらもう会えなくなるのかな…………。

私と絡んでるのも、仕事だからだよね”

そう思うと寂しくなった。