しゃぼん玉


「俺が勉強してる時も、

母さんが夕ご飯作ってる時も、

父さんがゴルフの道具を片付けてる時も、

メイは泣いてました……。

『やめて、叩かないで』って。


メイの父親が帰ってくる夜には、一旦虐待がやんで、静かになるんだけど……。

メイが学校から帰ってきて父親が帰宅するまでの数時間、

メイは母親に殴られたり、ひどいことを言われたり……」

「お前、それ、黙って聞いてたのかよ」

シュンが責めるようにそう言った。

リクは怒りをあらわにして、

「そんなわけないじゃないですか!!

泣き声が聞こえるたび、メイんちに様子を見に行きましたよ。

でも、そうするとおばさんは虐待をやめて、メイをかわいがりながら玄関に出て来るんすよ。必ず……。

メイは明らかに泣いてたような顔してた。

だから俺、おばさんに問い詰めたこともあるんです。

でも、はぐらかされて……。

『私はメイのことを大切に育ててるし、大好きなの。そんなことするわけないじゃない』って言って。

メイはあんなに怯(おび)えた顔してたのに、俺は、何もしてあげられなかった」