ナナセはリクに紙袋を渡した。
「これ、穂積さんに渡して下さい」
「これ、なんすか?」
リクは目を見開き、ナナセから受け取った紙袋を軽くゆする。
ナナセは真面目な瞳で、
「そこには、お金が入ってる……」
「えっ!?」
一同は声を上げる。
リクは紙袋をナナセに突き返した。
「なんでメイにそんなのあげるんですか!?
わけわかりませんよ。
頼まれたって、そんなの渡しませんから!!」
動揺したナナセの手元からすべり落ちた紙袋をシュンが拾い上げ、リクに渡した。
「ナナセはミズキを守ろうとしてんだ。
お前は知らないだろうけど、穂積は、ミズキの弟を自殺させるくらいひどいことしてたんだよ」
「そうですか……」
リクは、シュンの話が耳に入っても全く驚かず、むしろ冷静だった。
一同、リクのそんな反応が意外で目をみはる。
ナナセは強い瞳で、
「俺はミズキちゃんを守りたい。
また、穂積さんがミズキちゃんを脅迫してこないとも限らないから。
だから、それを穂積さんに渡してくれないかな」
ナナセは、親戚からもらった大学の入学祝いや、日頃のお小遣貯金を下ろし、穂積メイに渡すつもりだったのだ。


