ズキンズキンと、傷の付いた心の音を全身に受けながら、アイリは言った。

「そうじゃないけど……。

でも、不安になるよ。

あの時電話に出たのは誰なの?

メイって、マサヤにとってどういう人なの?」

マサヤはこの重苦しい空気とアイリの質問から逃れたがっているように、大きなため息をついた。

そして、黙り込んでしまった。

これは、ケンカした時のマサヤの常套(じょうとう)手段とも言える、自己防衛。

彼は、自分にとって都合が悪いことがあると黙り込み、アイリの機嫌が良くなるまで一切話さなくなるのだ。


こういう時、アイリはいつも自分から折れてマサヤに歩み寄っていた。

ずっと無視されるというのは精神的につらいし、楽しく過ごしたかったから。

マサヤが他の女の子を褒めたり、平気でアイリが傷つくことを口にしても、アイリは我慢してきた。

でも、今日は譲れない。