アイリはマサヤの上半身を、力一杯突き飛ばし、

「今、メイって言ったけど……。

それ、誰?」

マサヤはバツの悪そうな顔で、

「それがなに?

他の女の名前、間違って口にしただけじゃん」


アイリは一瞬、苛立った口調のマサヤに怖じけづきそうになったが、眉をキリッとつり上げ、

「私だってこんなこと言いたくないよ……。けど……。


ずっと訊(き)こうとおもって訊けなかったんだけど………。

この間、マサヤに電話したら、女の子が出たよ?

その子が“メイ”なんじゃないの??」

不安や猜疑(さいぎ)心からアイリの体は震え、涙が止まらなくなった。

マサヤはアイリの発言に気まずそうに目を伏せたあと、乱暴な口調で、

「つーか、なんで俺が責めらんなきゃならないわけ?

お前のそういうとこ、ホントうぜー」

「…………」

「電話に女が出た?

だからなに?

俺が浮気してたとでも言いたいわけ?」