しゃぼん玉


「星崎、私と付き合ってよ。

前から好きだったの、あんたのことが」

いつも親切なリョウに、あの日思い切って告白してみた。

その時、体中がすごく熱くなったのを、今でも鮮明に覚えている。


『付き合う=エッチ』だと、思わなくはなかった。

心のどこかで考えた。

でも、リョウは父親とは違う。

メイは、裏のないリョウの爽やかな振る舞いに惹かれた。

そんなリョウと付き合えたら、長年求めていた愛情を注いでもらえるかもしれないと思った。


でも、リョウからの返事は、メイの望みとはかけ離れたものだった。

「ごめん……。

そういうの、どうしたらいいかわからないんだ……」

顔を真っ赤にしてうつむくリョウ。

目の前のメイと視線を合わそうとしない。

その言葉を聞いた瞬間、メイの中に悪魔が巣くったのかもしれない。

「……ダッサ。ウソに決まってんじゃん。

誰があんたみたいな男、好きになるかよ」

愛情と同じ大きさをした暴言が、口から飛び出していた。

リョウのことが心底好きなのに、悪意としか受け取れないような言葉が心に生まれて育つ。

以来メイは、毎日そういった言葉をリョウにぶつけるようになった。