しゃぼん玉


リクは虚ろな表情の中、涙目で、

「俺達からしたら信じられないことだけど、それがメイの日常だったんすよ……。

逃げたくても逃げられない。

母親が肉親っていうだけで、メイは理不尽な環境に耐えなきゃならなかった。

他人だったら、どれだけ良かったか……!!」

しばらく、全員が涙する気配が漂った。

夕闇が射す室内は、いっそう暗く、しんとしている。


リクは落ちた気持ちを奮い立たせるように、

「そういう環境で育ったメイを、ウチの親は良く思ってないんです。

ウチでメイを預かってる間もそうでした。

メイが風呂に入ってる間を見計らって、父さん達はずっと、メイを家に帰せ、施設に連れて行けって、言い続けてきました。


……メイはたしかに悪いこといっぱいしてます。

見るからに他の子と違う雰囲気がある。

でも、根っからの悪人じゃない……。

ただ、父さん達にはそうは思えないみたいで、俺とメイが関わるのを良く思ってないんです……。

メイは、父さん達のそういう気持ちを見抜いて出て行ったんだと思います。

もう二度と、ウチには戻ってこないかもしれない。


俺、どうしたら……。

メイのために、何もできないのかな?」