しゃぼん玉


今となっては、父親がどういうつもりでメイを抱いていたのかはわからない。

だが、それが世間一般ではタブーとされていることだけは理解した。


メイはそのままトイレの個室に飛び込み、吐いた。

吐き続けた。


脳裏に蘇る両親の喧嘩。

夫婦の不和。

それら全て、体験しなかったことにしたくて、メイは吐き続けた。


胃の内容物は消化されていたが、かまわず吐いた。

こうすれば、同時に過去も吐き出せる気がして……。

繰り返しているうちに、だんだんと食道が胃酸でかぶれ、痛くなってくる。


“私は…………”


以来メイは、人間不信に加え、男性不信になった。

唯一メイをかまい続け、メイの素を知り、理解を示してくれていたリクにすら、心を開けなくなった――。