だからといって、リクを頼るわけにはいかなかった。
――実の父親のように、リクもメイの体が欲しいから親切にするのだ。そうに決まっている――
そういう不信感が消えなかったから……。
メイは中学生になって初めて、自分ほど不幸な人間はいないと心の底から思った。
子供が生まれる仕組み。
性行為の意味。
中学生になって、周りの生徒達の情報や学校の授業で、それらについて深く知った。
“私はお父さんに――――”
背筋が凍りつき、雪山で遭難しているような気分に陥(おちい)った。
学校帰り道。
メイは書店で、自分と父親の関係を詳しく知りたいと思い、あらゆる書物を読みあさった。
“やっぱり私は、誰にも愛されていなかったんだ”
それらの書物には、父親と娘の性行為に関してこう書かれていた。
《妻との性生活やコミュニケーションが不足していると、夫は娘を妻の代わりにすることがある。》
本をつかんだまま、メイは店内のトイレに走り、鏡に映る自分の姿を見た。
今まで意識したことがなかったが、そこに映る自分の顔は母·翔子にそっくりではないか。
“お父さんは、私を愛していたわけじゃなくて、
欲求を満たすために、
お母さんと通じ合えない寂しさを紛らわすために、
私をお母さんの代わりにしていたんだね……”


