しゃぼん玉


「………………」

黙ったままうつむくメイを見て、リクは興奮気味に尋ねた。

「またおばさんにやられたの!?」

「………………」

メイは何も答えなかった。

リクにどう受け取られても、大差ないと思ったから。

家でされていることを、学校でもされただけ。

ただそれだけのこと。そう思った。


リクは瞳に涙を浮かばせていた。

夏の夕焼けがその顔を数倍、悲しげに見せていて…………。

彼の顔を見上げているうちに、メイの中にも悲しみが広がっていった。

“私は何だろう。

何のために生まれてきたんだろ。

殴られて、

泣いて、

叫んで、

求めて、

その繰り返しの中に、希望の一つも見つからない”




その後リクは親に頼み、メイを連れて美容院に連れて行ってくれたが、髪の毛が整えられても、メイの心に刺さったトゲが抜けることはなかった。