しゃぼん玉


皆、嫌悪感を存分に含んだ瞳でメイを見ている。

メイは、この表情をよく知っていた。

母·翔子がメイに向ける眼差しと同じ。

“こわい……!”

逃げようとしたが遅かった。

体育館の準備室内で、メイはすでにクラスメイトの大半に囲まれていた。

ほとんど女子ばかりだが、男子も数人混ざっていた。


怖くて声が出ない。

メイの全身に汗が吹き出してくる。

耳の奥から、ドクドクと激しい脈の音が聞こえる。


怯えるメイの表情を見て、皆が嬉しそうにしていた。

「あんた、明日転校するんだよね。

だから今からみんなで、お祝いすんの。

喜びなよ」

クラスの中心人物の女子がそう言うと、皆が一斉にメイの髪の毛をひっぱりだした。

四方八方から、容赦ない力で髪を引かれる。

つかまれた髪が、全部頭皮から抜け落ちてしまうのではないかと思った。

「やっ……! いたっ……」

“なんでみんなこんなことするの?”

精神的な衝撃と頭皮を裂くような痛みで、メイはかたく目を閉じる。