咄嗟に長年の勘、ビルの谷間へ後ろ向きのまま倒れ込む。 それしか、無い。 しかし人が一人、やっと通れるような細い隙間。 (失敗だったか?……っていうか『仕事』って……?) 彼女は水を得た魚の如く華奢な体を活かし、アチコチに仕込んだ刃物類が徐々に迫る。 避け転がりながら、黒髪から覗く顔は。 「キレイだ……」 「え?!」 思う筈の台詞が口をついてしまった、が。 ……彼女の動きが止まった。チャンスか?