そのまま足取り軽く玄関から出ていってしまった。
私は2度寝をする気にもなれず、リビングに戻ってケトルに水を汲み、珈琲を入れる準備をする。


「…なんだ?あれ…」


珈琲の袋を手に掛けた時につい漏れてしまった独り言。
それに応えてくれるものなどなく、テレビをつけることさえ忘れていた空間には重すぎるほどにずうんと響いた。
日当たりの悪いこの部屋は、この時間でもまだ暗い。
いや、それ以前に今日は天気が良くない。















昼になる前に匠の家を出て、吉祥寺に向かう。いや、帰る。
休みを利用して、こうして私は時々自分の家に帰る。
服や雑貨を取りに行ったり、うっすらと家具に積もる埃を除去したりするために。
または、行きつけの歯医者や産婦人科に行ったり。
およそ2週間振りに訪れる吉祥寺もまた、曇天に覆われている。