『もう主任と…会社には、言ったんだけどさ。仲間にはまだ言ってないんだよね』

『私だけっすか』

『あやめには、真っ先に言わないと』


愛美の、その私に対する義務感はどこから来るのか。
女社会のこの会社は、強烈な仲間意識を生み出している。
飄々とした愛美にはその意識は薄く(決して薄情なわけではない。仕事と私情を割り切るのが誰よりも長けているから)、おそらくは本心より私を仕事という括りを超えての仲だと思ってくれていたからだろう。
愛美のように突発的に辞めていった人達を、もう何人も見てきた。
「いついつまでに辞める」ではなく、「来月辞めます」「来週辞めます」といったふうに。
ベテランの先輩も、自分より後に入社した後輩、派遣社員も。
その中には、愛美程でなくとも、とても仲が良かった子もいた。