匠とはまた別の系統の綺麗な顔をしていて、瓜実顔に切れ長の、背の高い美人。
上の名前は十六夜(いざよい)。
なかなか知的な名前を名乗るもんだと関心したし、成る程、会話の感じからもその聡さが滲み出ている。
それにしてもセーラムのホストのクオリティの高さには下を巻く。
匠のことがなければ、今頃私も常連だったかもしれない。
そんなわけで、ナオが乱闘だなんて俄かに信じがたい。


「どうして、ナオが?」


少しずつ覚醒してきた頭で、私は言葉を紡ぐ。
瞼はまだ重たく、匠が見えない。
恐らく、もうじき朝だ。
あと数時間は寝られる気がする。


「俺が出先から帰ってきたら、他のスタッフと揉めてた。揉めてたっていうか、もう既に殴り合ってた」

「いよいよもって、ナオの柄じゃないじゃない…」


あの顔で、あの性格で人を殴ることなんてできるのだろうか。