匠がダウナーになった時は、決まって私は匠と一緒にベッドに潜り込む。
昼でも、夜でも。


「医者…?」


蚊の鳴くような匠の声。
その声に私の心は一瞬怯むも、私はぐっと踏ん張ってみせる。
もう、私一人では匠の“病気”を手に負えない。
私が匠の存在によって彼岸から此岸に戻ることができた、あの時と勝手が違うことを、私は割と早い段階で悟った。
本当は、私が全て受け止めたかった。
本当は、私が全て理解したかった。
けれども、それは到底無理な願望であり、どんなに私が頑張ったとて叶わない。
唯一、匠が匠の全てを私に晒してくれることが、匠の奥底―靄がかかって見えない、深いところ―に触れているような気がした。
それは、ただの優越感なのだろうか。
仮にそうであったとしても、それでもいいと思うようになってしまった自分がいる。