少女とはもう2度と会わないだろうし、匠越しに彼女の影を見ることもないだろう。












私は客人が使っていたヘレンドを、テーブルの上からそっと持ち上げる。
カップの淵にラメがきらめくピンクのグロスが、うっすらとついていた。
なんて小生意気な。
こうして私の所有物には、数多の女の痕跡がついていくのか…と私は自嘲した。
気持ちのいいことではないけれど、それを良しとも悪しとも思わない。
濃密すぎた若き感情が煮詰まった、そこにはもう、「匠は私が守る」というその曇りない一点の信念しか残っていないのだから。