諦めないで、幸せを求めて噛ませ犬になろうとも



「阿行さんに会いに来たんですか」


「冬月に弁当届けに来た……」


スローな動きで腕を前に出した溝出。肘部分をガムテープでくっつけているためかあまり上がらないものの、溝出の手には和柄の布に包まれた弁当箱があった。


「いつもなら、冬月が弁当忘れた時は秋月(あきつき)が届けんだけどよぉ……。なんか、今日は俺に行けって……」


「それは……ご愁傷様です」


危篤患者に弁当を届けさせるなんてとんだ苦行だ。更には学園という人で溢れる場所に行かせることでそのみすぼらしさを晒すはめになると言う……冬月に負けじと、秋月もサドの化身だった。


「あの、良ければこれを」


渉がいそいそと差し出したのはアロンア〇ファ。


「僕の私物ですが」


「接着剤を常備!?――あ、いや……、いいのか?高級接着剤じゃねえか、これ」