諦めないで、幸せを求めて噛ませ犬になろうとも



「おいぃぃっ、なに冷静に見てんだ、この坊っちゃんっ!俺の命がかかってんだぞっ。書く暇あったら、この恐怖の塊に飛び蹴りでもしやがれえぇ!」


必死さとツッコミ魂に火がついて調子が戻ってきた溝出だった。


「そう言われましても……。阿行さんの本来の姿を初めて見られたので、この機を逃せませんよ」


「本来の姿だぁ?なんだ、今までのこいつの『ろり』ぶりは馬鹿な男共を陥れる演技だったのか!」


「猫かぶりという意味ではありませんよ。――こんな話があります」


すうと透明さを持つ渉の声が溝出に通る。


「ある生徒が遅くまで学校に残っていました。夕暮れ間近の時、前ぶれなく、ふと、背中に重みを感じました。肩越しから後ろを見れば、“何か”が生徒の背中におぶさっています」