「何しているんですか?」
白い闇に日常が介入した。
溝出の精神内に入り込む声。少年にしてみれば、廊下の真ん中で阿行の体に押し潰されるしゃれこうべと、おかしな場面に疑問を投げ掛けただけだが。
「わ、わたるんんん……っ」
「渉です。姓は春夏秋冬ですよ、溝出さん」
断崖から落とされた最中にあった枝らしく、今の渉は溝出にとって最大の救いだった。名前については阿行がわたるんわたるん言っていたので、溝出が勝手に「こいつかわいそーな名前っ」と勘違いしての間違いである。
「た、たすっ、ガキ、じゃねえ、わたるんさまあぁぁ!」
「だから、渉です。でも、あなたが様付けするだなんてどうしたんですか」
阿行と溝出の前に立って、屈みはしないものの渉は下に目をやった。
「こ、こいつがっ、あぎょうとかいかにとかっ、死ぬっ、死んじまう、俺っ」
「ええと……」


