諦めないで、幸せを求めて噛ませ犬になろうとも



極寒の中にいるかのように溝出の歯がカタカタ震える。


寒さとて実際にあるはずはない。怖さによるフェイクだ。


極限状態に追い詰められて初めて感じる恐怖の寒気。


内にある生存本能が金切り声をあげていた。


真っ白いだけのお面なのに、覆い被さりながら溝出を覗きこむから影(黒)ができる。


ぬっとりと、人とは思えないすべらかな動きをして。




「あぎょうさん、さぎょうご、いかに」




溝出に問いかけた。

微動だにしない顔は溝出の間近にあるまま。恐怖に話しかけられた時に悲鳴の一つでもあげてよさそうなものだが。


「あ……っ、あ……」


本物の死の気配を感じたとき、出たのはひとさじの声。


悲鳴をあげたらその場で殺されると思った。心臓を鷲掴みにされたような状態では叫ぶ前に命乞いの目で見てしまう。