蜘蛛切りを抜刀しながら、切っ先を震える溝出の額につけた。
「逃げたらどうなるか分かるよな。美味そうに食わなきゃ、切り刻んだあとに墨汁に一年漬け込むぞ、ザコキャラ」
本気だった。
悲鳴が声に出せない恐怖。固まるも救いを求めるように溝出は阿行たちを目端で見た。
「わたるんー、おでん食べたい。ウィンナーがいいっ」
「おでんでウィンナーをチョイスするとはまたマニアックですね」
いつもながら、阿行が渉におぶさる和やかな光景。天国と地獄が線引きされたようにこちらとは段違いだ。
「いこー。今はコンビニで半額セールって言ってた」
「へえ。コンビニ情報なら阿行さんの方が詳しいみたいですね」
阿行の溝出好きはどこにいったのか。何のことはない。お腹空いたし、渉の方が好きなので溝出を空気扱いできた。


