諦めないで、幸せを求めて噛ませ犬になろうとも



骨がぱらぱらと欠けていくのを感じながら、頭を上向きにする溝出。――で、どす黒いオーラを纏った冬月を見て固まった。


笑う狐面が怖さを余分に飾る。


「ふ、ふゆっ、ふっ……、これ、はっ……」


かすかすな声と共に弁明しようとも、魔王(冬月)は何も言わない。


沈黙が重い。
物言わぬ脅威は断頭台のようで、その足元にいる溝出は囚人並みに怖さを覚える。


――冬月の手が動く。


「ひいぃぃっ」


ちょっとした動作で決して溝出に何か危害をくわえたわけでもないのに、溝出(囚人)にしてみれば断頭台の刃が上がって死刑準備完了に思えた。


冬月の手には醤油さし。プラスチックで魚の形をしたそれは普通よりも僅かに大きい。弁当箱を持ちながら、冬月は器用に赤いキャップを空ける。