コウガはヘラヘラしながら言うが、シキの表情は硬い。

「お前が思っている以上に、闇の世界は深いぞ?」

「ん~。でもオレも普通の人間以上に狂気を持つ者だからねぇ。今更普通の世界に戻ろうなんて思わないよ」

コウガはパソコンの電源を落とし、立ち上がった。

「さっ、もう休もう。追っ手が来ない就寝を体験しようよ」

「はぁ…。ったく、厄介なヤツだな。お前は」

「キミほどではないと思うよ?」

コウガは虚ろな眼で、シキを見つめた。

「俺は元からこうだ。途中で変わったのはお前の方だろう?」

「変わってしまったのは、キミと出会ったからだって、何度言えば覚えるのさ」

「…言ってろ」

不貞腐れたシキは、コウガの手を掴んで寝室へ向かう。

「…ホント、素直じゃないんだから」

コウガは呟きながらも、その笑みはあたたかいものだった。