「あれれ? 葉山ちゃん、今声…みたいのあげなかった?」
わざとらしいくらいの愉快そうな声。
私は口に手をあて、ぶんぶんと頭を横に振る。
「人間サンドバック…もいいな」
くつくつ、久涅が笑った。
「やめろ、葉山に触るな!!!」
翠が拳を振り上げると、久涅は不機嫌そうに周涅に目で合図した。
「はいはい…」
途端に消えた周涅は、手の中に…ぐったりとした翠を抱き。
「ああ、久涅ちゃんの機嫌損ねるからだよ、もう…」
酷薄めいて笑うと、部屋の端に放り捨てた。
冷酷非情な男が2人。
尋常ではない強さを持つ者が2人。
櫂様、出来るなら…
此処を通らずに帰ってきて下さい。
私は心で祈る。
私が、私が居る限り。
煌は死ぬことはありませんから。
私が殺させませんから。
櫂様…どうかそのまま横須賀に!!!
くつくつくつ。
どちらが笑ったのか。
くつくつくつ。
どちらが呼応したのか。

