怒っている。
目茶苦茶怒っている。
あたしを後方に放り投げ、憤然と玲くんを見据えている。
玲くんも…櫂のご立腹具合に、少々顔を引き攣らせていて。
「か、櫂…あ、あのね…」
「……」
聞く耳持たないという感じで。
「ゆ、由香ちゃん…どうしよう、ねえ由香…」
「ご、ごめん…神崎。ボ、ボク…君と師匠の見ていたら、腰砕けになって…」
動けないらしい。
煌に目を向けた。
煌は"エディター"を紐のようなもので縛り上げている。
黙々と働いている。
まるでこっちを無視して。
だけど判る。
怒りのオーラだ。
完全無視を決め込んだらしい。
仕方が無い、此処はあたしが…
「櫂、落ち着こう? ね?」
しかし櫂は見向きもしない。
更にずいと玲くんに足を1歩前に踏み出すと、片手で彼の胸倉を掴んで。
「櫂!!?」
剣呑な空気にはっとしたあたし。
たけど、櫂はあたしを無視していて。
「お前…やりすぎなんだよ、玲。
判っていてやっていただろ、お前。
俺、言ったよな?
戻ったら、覚えておけって」
静かに静かに――
鋭い目が更に鋭さを増させるか如く、細められていく
ゆらり。
櫂が玲くんに近付いたと思うと、
「な!!!!」
何と櫂は…玲くんにキスしたんだ。
唇に。

