だけど由香ちゃんは判ったみたいで、三日月型の目で笑い、
「これなら仕方が無いね、師匠。
こうなったら速攻戻るしかないでしょ。
嫌でも意識がこっちの身体の方に向く方法、さすがは紫堂。むふふふふ~」
すると意識の玲くんは、
「そうだね、こうなれば意地でもあっちに戻りたい。
ああ…絶対、後で逆襲されそうな気がするけど」
苦笑して…だけど、何だろう、この嬉しそうな顔。
「まあ、師匠は十分我慢したからね。良かったじゃないか。嫌な記憶も消えるし、一石二鳥だし」
「ふふふ。でもいいのかな、そんな嬉しい展開で。オチあって戻れなかったら、欲求不満で櫂に取り憑こうかな」
「そりゃあいいね、そんな一途な怨霊に取り憑かれたら、あの紫堂いえども…紫堂はおろか誰も何も手出しできないぞ」
全く、和やかに思える会話の内容が掴めない。
一方――
「煌!!! 今は揺らぐな!!!」
「だけどよッッ!!!」
「玲を戻すのが先だッッ!!!」
「~~~ッ!!!!
何だよ、この展開ッッッッ!!!」
男2人も判っているようで。
判らないのはあたし1人らしい。
「ほらほら神崎。距離感はこれくらいかね」
由香ちゃんがあたしの後頭部を掴んで、玲くんに聞いた。
「……。もうちょっと…近い方が…」
「す、ストップストップ由香ちゃんッッ!!!
これじゃあくっつき過ぎだってッッッ!!」
あと数cmで玲くんの唇と重なってしまう。
超、至近距離。
玲くんのお肌って、透き通るように白くて、すべすべして本当に綺麗…。
「ん……」
また"玲くん"が鼻にかかったような悩ましげ…違う、苦悶の声を漏らして。
眉間に皺を寄せて身動ぎした。
長い睫が、小刻みにぴくぴく震えている。
ああ、首筋から…艶ある鎖骨ラインが露わに…。
何だか…。
ねえ?
何だか…。
"身悶える"って…こういうの?
あたしの顔は沸騰する。

