シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


だけど由香ちゃんは判ったみたいで、三日月型の目で笑い、


「これなら仕方が無いね、師匠。

こうなったら速攻戻るしかないでしょ。

嫌でも意識がこっちの身体の方に向く方法、さすがは紫堂。むふふふふ~」


すると意識の玲くんは、


「そうだね、こうなれば意地でもあっちに戻りたい。

ああ…絶対、後で逆襲されそうな気がするけど」


苦笑して…だけど、何だろう、この嬉しそうな顔。


「まあ、師匠は十分我慢したからね。良かったじゃないか。嫌な記憶も消えるし、一石二鳥だし」


「ふふふ。でもいいのかな、そんな嬉しい展開で。オチあって戻れなかったら、欲求不満で櫂に取り憑こうかな」


「そりゃあいいね、そんな一途な怨霊に取り憑かれたら、あの紫堂いえども…紫堂はおろか誰も何も手出しできないぞ」


全く、和やかに思える会話の内容が掴めない。


一方――


「煌!!! 今は揺らぐな!!!」


「だけどよッッ!!!」


「玲を戻すのが先だッッ!!!」


「~~~ッ!!!!

何だよ、この展開ッッッッ!!!」


男2人も判っているようで。


判らないのはあたし1人らしい。


「ほらほら神崎。距離感はこれくらいかね」


由香ちゃんがあたしの後頭部を掴んで、玲くんに聞いた。


「……。もうちょっと…近い方が…」


「す、ストップストップ由香ちゃんッッ!!!

これじゃあくっつき過ぎだってッッッ!!」


あと数cmで玲くんの唇と重なってしまう。


超、至近距離。


玲くんのお肌って、透き通るように白くて、すべすべして本当に綺麗…。

「ん……」


また"玲くん"が鼻にかかったような悩ましげ…違う、苦悶の声を漏らして。


眉間に皺を寄せて身動ぎした。

長い睫が、小刻みにぴくぴく震えている。


ああ、首筋から…艶ある鎖骨ラインが露わに…。


何だか…。


ねえ?


何だか…。


"身悶える"って…こういうの?


あたしの顔は沸騰する。