「夢から覚める感覚かねえ」


由香ちゃんが言った。


「僕の肉体を横に、夢から覚める感覚…んー」


確かにやりづらい。


妙な先入観があるが故に、意識しにくい。


「じゃあ肉体を起こして上げればいいんじゃない?」


あたしが反対の手で、"玲くん"の体に触れた時、


「ん…」


"玲くん"から悩ましげな…いや、苦しげな声が漏れた。


「やばいよ、神崎。"師匠"と師匠が同時に目覚めたら、どうなるのさ。"混沌(カオス)"だぞ?」


確かに。


「櫂、手伝ってーッッ!!!」


困った時には櫂に聞くのが一番だ。


すると櫂は、こちらに忌々しげな目を寄越し、そして考え込んで、盛大な舌打ちをして。


「玲…戻ったら、覚えておけよ」


不穏な言葉を言い放つ。


「今度は…煽られてくれてるの? 仏頂面して、僕の"ご褒美"スルーしたくせに」


愉快そうに玲くんが笑った。


「――ああ!!!

もう更に煽られてやるよッッ!!!

お前が望んだ"褒美"だ!!!


芹霞、玲から離れて、玲の肉体の隣に行け!!!」


褒美?


かなり苛立った声に、あたしは何だか判らないままに従った。


「そっちの"玲"の顔を覗き込め!!!

至近距離でッッ!!」


「――は?」


そうする意味が判らない。