「櫂、無理しないでね!!!」


大きな声で労(いたわ)りの言葉をかければ、


「俺は大丈夫だから、さっさと玲を戻せ!!」


櫂は、何でもないというような顔をして言った。


クールというより、若干不機嫌のような…?


きっと櫂の心の中にも、意識とは相反する"闇"はあるのだろう。


更にはこんな狂気を吸い込められるという、不可思議な闇の使い手であるならば。


櫂の心の奥底は、真っ黒で…玲くんとは比較にならない程頑固な黒コゲになっているかもしれない。


それでも、あたしはきっと見つけ出すだろう。


本当の櫂を。


そう、今まで通り。


あたしは櫂に頷いて、由香ちゃんと共に玲くんの傍に駆け寄った。


「ねえ、玲くん。同じ場所に意識と体があって、意識をどうやって体に戻すの?」


肉体の横に横たわった玲くんに、あたしは疑問を投げかけた。


戻る気満々の玲くんと、戻れ戻れと煩い煌と櫂。


戻りたいのは判るのだけれど、普通人の頭には…そう簡単にいくものかどうかが理解出来ない。

「んー、実は僕もそれ考えてたんだ」


何と!!!


玲くん…戻る方法が判っていないとは!!


「とりあえず今の僕は、足もあるし…幽霊のように体が透き通ることもなく、きちんと物体を掴めている。自覚としては肉体を持っているんだ。ほら、いつもの僕と、まるで違和感ないだろう?」


試しているのは判るんだけれど、どうして玲くん…"恋人繋ぎ"?


「隣に、同じ姿の僕がいて、逆に萎縮して緊張しちゃうような…」


にぎにぎ、にぎにぎ。


緊張…している、のかなあ?


途端――


「「戻れッッッ!!!」」


煌からも櫂からも怒声が送られる。


「お、怒らなくてもいいでしょう!!? 大体、あんた達方法判っているの!!?」


こちらもついつい怒り口調になる。


「この世界に沈んだのと逆の方法すればいいだろうが!!!」


櫂が当然という口調を寄越した。