――早く行くぞ。
何故か焦っている煌は、黒い壁を偃月刀で切りつけた。
――無意識の更に奥には、普遍的な意識とかいう世界があり、そこは…人類が共有しているもんなんだとよ。だったらそこを踏めば…"エディター"の領域にぶつかるだろう。
――お前、それ…誰から聞いた?
煌は、暫くして答えた。
――七瀬の兄貴にだよ。
――なんで、周涅…だとか言う奴がそこに出る?
煌によれば、あたし達が踏み込んだ世界は、やはり蒼生ちゃんのお導きなんかではなく、皇城の中枢にいるという…周涅、紫茉ちゃんのお兄さんの妖しげな術にかかっていたらしい。
ここは時間が凄く経つのが早いらしく、煌は桜ちゃんと小猿くんとで皇城本家に乗り込んだらしい。
――葉山はどうしたのさ?
――置いてきた。
堅い顔で煌がそれだけを端的に言い、そしてポケットから何かを取り出せば。
砂時計。
――電磁場が狂ってるらしいから、アナログな方法が有効らしい。ちょっと見てれよ、これ…。
逆さまにした砂時計は、当然のごとく落ちきった。
――時間にして1分かかってねえよな。これ…10分計だ。
10分の1の速さで…この世界が進んでいるということ?
体感経過時間は、此処に流離い始めてから…1時間になるかならないか。
だとしたら、実際どれだけの時が経っているの?
――此処をもたもたしてたら、抜け出たとしても0時までにタイムアウトになる。だから…急いで玲を連れ戻す。玲の意識が戻らないと、周涅の術は消えない…らしい。
――でも…師匠でも抜け出れない"エディター"の世界を、どう潰すのさ。例え行けても戻れる確証はないんだろ? それに…そう簡単に逃がしてくれないと思うぞ、彼女。
そう首を捻った時、櫂が静かに言ったんだ。

