玲くんの後姿を追いながら、あたしは思い出す。
――消えてしまえッッッ!!!
櫂を憎悪していた玲くんのあの世界は…
――俺達を信じろ、玲ッッッ!!!
櫂の叫びによって…
狂気が…黒い闇が取れたんだ。
突然、呆気なく――。
誰もがぽかんとした顔で、倒れこむように崩れ落ちた玲くんの顔を見ると、玲くんは泣いていた。
「戻りたい……」
そんな声が聞こえて。
「嫌だ…"こんな女"に触れたくない…。狂いたくない」
そして意識を飛ばした。
"こんな女"
それは――あたしでも由香ちゃんでもなく、"エディター"と呼ばれる少女のことだと、櫂と煌の意見は一致した。
そしてあたし達は、ここにはない…分離された玲くんの意識が…緊縛状態でいることを予想した。
――突如この世界が鎮まったのは…相反する玲が逆に抑え込められているからだ。幸か不幸か…玲がピンチだ。
櫂の言葉。
肉体に残る心が深層で、幽霊のような意識が表層で…それが人間というものを構成しているのだとしたら、2つあって初めて人間は存在出来るのだろう。
逆転状態になっても然り。
分離状態になっても然り。
あたしたちが居た深層の根強い闇は、逆転して…"エディター"の世界にいる玲くんの意識、表層部分に流れた。
深層の闇にて"玲くん"を苦しめていたものは減じられ、隠されていた部分が垣間見えるようになったんだ。
玲くんの意識との繋がりはまだあることが証明された。
だとしたら、助けに行ける!!!

